もう1曲追加させてください

この前書いたトロイメライタレガ編の和音の弾き方に関する考察は私の妄想ですので、弾く方は鵜呑みにせず自分で感じたままに弾いてくださいね。
好きな弾き方をするのが一番楽しいですから。
最近家から25kmくらい離れた永福町の教室に自転車で通っているのですが、秋冬の朝は空気が澄んでいて富士山が見られたり、荒川に反射した朝日がキラキラと光りとても気持ち良いです。
自転車で大変じゃないですか?と言われたりしますが、私は楽しい事しかしない!というアリとキリギリスのキリギリスみたいな生き方をしているのでこれも楽しいからやっている事。気にしないでください。
それと同様に演奏表現も楽しいのが一番大事です。
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トロイメライを作曲したシューマンは評論家でもあったのですが、結構空想家で同年代のショパンの曲の評論をショパンに的外れだと笑われたエピソードがあるそうです。
他にも色々あるみたいですが暗くなるのでそれは置いておいて、同じ妄想家としてなんだかシンパシーを感じてしまいます。


今日は楽曲分析のレッスンの日だったのですが、そんなシューマンが大好きだったショパンを彼に紹介したメンデルスゾーンの無言歌集の中の「信頼」または「ないしょの話」が課題曲でした。
8小節学ぶのに約90分かけて教えて下さる先生。
どんだけー!(マイブームです)

大雑把な癖に何故か細かい事を気にする自分が、レッスンが緻密すぎて「ちょっと時間をください!」というレベル。
でもそういうレッスンでなければ続かなかったでしょう。
例えば下の画像、曲の2小節目。
クレッシェンドが右手担当の上の段のまで伸びています。
でも弾いてみるとわかりますがここまでクレッシェンドするのは変な感じになります。
この音までクレッシェンドしたくない!みたいな。
ギターでも良いので上の段の高い音だけラまでクレッシェンドして弾いてみてください。
何か変だな?となる方も多いと思います。
変だなとならない方も気にしないでください。
メンデルスゾーンの真意を感覚で理解できているのかもしれません。
無言歌集4.jpg

上の画像の下の段ので囲まれたファと上の段ので囲まれたファ#ラでイ長調のⅥの和音(T)になります。
和音の成立が同時ではなく、ずれているわけですね。

それを示すためにクレッシェンドが上の段のまで伸びているのではないかと。
もしそうならメンデルゾーンは随分「親切」ですねーみたいな事を先生と話しました。

編案者や出版社の意向によりここまでクレッシェンドが伸びている可能性も考えましたが、メンデルスゾーンが長年過ごしたドイツのライプツィヒ発祥の出版社ペータース版でも同様に書かれていた事、他者の意志が楽譜に働いているなら、最高音で非和声音であり跳躍もしている手前のシでクレッシェンドが終わっている(下の画像)のがしっくりくると言った理由で作曲者自身がここまでクレッシェンドを伸ばしているということで納得しました。
無言歌集2.jpg
そう解釈するとクレッシェンドは和音の切り替えが成立するまでを示すもので、素直にまでクレッシェンドする必要はないのかもしれない。
ちなみに私は頂点のシを弱めたりするのも好きです。

そんな感じでこのクレッシェンドはメンデルスゾーンの親切さを表すかもしれません。

この親切さというのは結構重要かもしれず、私の好きなギタリストの演奏はその時々動きのある声部が浮き出ているように聞こえてくるんです。
他のギタリストではそれがあまり感じられず、なぜなのか10年以上疑問だったのですが、これは聞く人に配慮する、曲を聞きやすいようにする親切心なのかなと。

実際、その人は飲み会の席でトイレ後の私のズボンのファスナーが下がっている時、それに気が付いた同席していた他の方から耳打ちされ、「おいおーい!自分社会の窓全開やないかい!」と直接指摘するのではなく「俺はこんな失敗をして~」みたいなエピソードを語って私が恥をかかないように遠回しに気づかせてくれたりと親切心満載の方でした。
まあその方の演奏に対して親切心を感じると言うのは私の妄想で、実際はその方が演奏の質を追及した結果がそうなっただけ、というのが正解だと思います。
それでも今回、発表会で弾くトロイメライにおいてそのギタリストの方のように声部の聞きやすさの追求をしてみたいと思います。
他にもホロヴィッツをはじめ有名演奏家の方の演奏を聴くと、和声の構成音の内、この音を強調したいというのが意図的に和音ごとに反映されているような気がして、それにも挑戦してみたいです。
まあこれも妄想ですが別に人に迷惑をかけなければ妄想の中で生きても良いのです。それは幸せな事です。
人に迷惑をかけたらだめですね。
お仲間の方はお互い頑張りましょう。

さてここからが本題ですが、来月の私の教室の発表会でトロイメライのほかにもう一曲弾かせてくださいというお願いです。
理由は3つ。
1.トロイメライで当たりの少ない柔らかいタッチを考えていたら新しい奏法を考えてしまい、トロイメライはほぼそのタッチで弾くのが相応しい。
それと比較する別のタッチの曲を弾き、生徒の皆様に右手のタッチの違いによる音色の変化を感じて頂き、その有用性を理解して欲しい、そのためにもう1曲弾きたい。

2.10代の頃から好きだったミュージシャンが聴きに来て下さるのでその人が好きなバンド(ビートルズ)の曲を弾きたい。

3.作曲の先生が聴きに来て下さるので先生の好きな作曲家(武満徹)の曲が弾きたい。

後半2つは私事ですが、発表会で武満徹さん編曲のビートルズのイエスタデイを弾かせてください。
生徒さんが主役、私はサポートというのは重々承知しているのですが申し訳ありません。
多分2曲あわせて5分ほど弾かせて頂く事になります。

石の裏のダンゴムシのように波風無くひっそり生きていきたいので、今回の発表会は私の人生にとっては潜んでいた石がひっくり返されるが如き珍事ですが、これもまた楽しいですね。

無言歌集「信頼」の最後にもう一度同じ主題が来るのですが、上に挙げた2小節目と違いソまでクレッシェンドが伸びています。
無言歌集3.jpg

この理由が次の課題の一つなんですが皆さんわかりますかね。
現時点で私は全くわからない!
なぜメンデルスゾーンはこう書いたのか悩んだ方は、作曲家の考えが知りたくて楽曲分析のレッスンを受けたいと考えた私の気持ちがわかるかもしれませんね。

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