少し早い節分

たまにマメは夜寝室に入ってきて勝手に寝ているのですが、今日は面白い寝姿だったので写真を撮ってみました。
アンモナイトみたい。
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時には私のお腹の上に乗って寝たり、足の間に挟まって寝ます。
夜中重くて起きたりするのですが、起こすのも可哀想なので我慢していたら寝違えて背中を痛めてしまいました。
鬼と言われようと今日からは容赦なくずらします!

さて、最近レッスンで反省すべきことがあったので戒めのために書いていきます。
うちの教室は心の中に湧いてくる「ここをこう表現したい」という気持ちを大事にしているつもりです。
最初は中々そういうクリエイティブな気持ちは芽生えず、「先生が言うように表現を作っていく」というのが王道ですが、段々練習していくとそんな気持ちも出てきますし、そうなるようなレッスンを心がけています。

例えば中学生のA君の場合。
彼は現在バロック時代のS.L.ヴァイスのリュートの曲「ファンタジー」をニ短調にしたものを練習しています。
その中に楽譜のような箇所があります。
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2分の2拍子なので赤い音符が1拍目と2拍目の表拍にあたり、ファ→ファ♯→ソ→ラ→シ♭→シ♮→ド→ド♯→レと4小節かけて主音のレに到達します。
ここをどう感じるかA君に質問したら「半音進行(も交えて)で徐々に緊張が高まっていっている」と返ってきました。
更にどんな表現が良いと思う?と聞くと「クレッシェンドが合うと思います」。
内心(おー、素晴らしい!よくぞここまで育ったものだ)と感動しました。
多分この曲の前にカヴァティーナをレッスンしていて、似たような箇所で似たような事をやったからだと思いますが、それを別の曲でも応用できているので勉強が身についている証拠です。

しかし、A君は楽譜の青い音ㇻソファにテヌートをつけて実際の長さよりそれぞれ結構伸ばして弾いていたんですね。
前の3小節ではなかった2段目の後半2拍目表に低音が来るのはある程度重さを置いて欲しいからだと思うので、私も多少なら伸ばして弾くと思うのですが、ここがどうも不自然に聞こえてしまい、何故なのか考えてみました。

まずさっきも書いたように高い音が4小節かけて半音進行も交えて徐々に順次進行で上行し緊張感を高めてきて、楽譜2段目最後の高い音である導音のド♯まで綺麗に作ってあります。
この導音ド♯から主音レに更に続くと肉体労働の後のビールが如き気持ちよさを感じることが多いです。
もちろん曲の内容や和声によって変わりますが、今回は割と「ひゃー疲れた。大将!中生ね!」って感じです。
ところが、その主音の前に〇で囲んだ8分休符がありその後に主音のレが来るんですよね。
この8分休符のお蔭で遂に主音のレが来る、または来て欲しい!と聞く人に感じさせておいてそのタイミングがずらされおっとっと、となってしまいます。
しかし、そういった軽い裏切りは時に喜びのスパイスになったりもします。

長い労働中「今日は絶対終わったらビールだわ」と楽しみにして、それが終わり「あー疲れた、大将!中生1丁!」と意気揚々と頼んだら「あー、今サーバー洗浄中で…」「そんなあ…(がっかり)」からの「あっ!瓶ビールならありますよ!」「ちょ、大将ったらお茶目なんだから!わっはっは」みたいな。
もしくはホラー映画で何か不穏な空気が流れて「この後なんか絶対怖いシーンが来る…きっと来る…」と見せかけてこない「なんだ良かった…」からの天井にドーン!!!みたいな。
多分作曲者のヴァイスさんは意図してそうなるように仕組んだと思うのですが、そういう構成の所で青い音3つとも長めにテヌートをかけて伸ばすとヴァイスさんが狙ったワンテンポ遅れてのビールがツーテンポくらい遅れて「すいやせん、今店の者にビール買いに行かせます」「あー、じゃあいいです…シュン」みたいになってしまうのではないかと。
居酒屋の下り要らないですねこれ。

まあそういう事を説明して(居酒屋とかは省いて)A君がせっかく出してくれた表現のアイディアを「今言ったような理由からここはそんなにテヌートいらないかも」とボツにしてしまったんですね。
鬼ですね。

あとで私の引き出しが足りないだけで、彼のアイディアを活かす道があったかもしれないともやもや考えてしまいました。
若しくはこのように1拍目にレが来ていたら低音の溜めというアイディアは活きると思う、多分ヴァイスさんも最初はそう考えたと思うのでほぼ当たりだよーとフォローの一つも入れれば良かったと。

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そんなA君のレッスンの次の日に今度は同じ中学生のB君のレッスンがありました。
曲はM.ジュリアーニの大序曲。
その中の真ん中から後半の部分で事件は起こりました。
この曲はイ短調の前奏が有り、メインはイ長調で軽やかに始まり、ハ長調に移った後、平行調のイ短調に転調し主題のイ長調に戻る推移部と言える箇所です。
赤くした表現記号がB君が考えてくれた表現になります。
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この表現を聞いて割と良い表現だと感じたのですが、2点気になる事がありました。
1点目はrit.が2段階あり、ジュリアーニの曲らしくないかも。なんだかロマン派っぽい。
2点目はB君はコンクールの自由曲でこの曲を弾くかもしれないので楽譜と違う表現が審査員の方にどう取られるかなあ。
そういう事を考え、せっかく考えてくれたアイディアの一部「一段目のrit.とデクレッシェンドを止めて、2段目最初はまだfを継続しよう」としました。
B君は私の力不足で昨年出場したコンクールで4位という入賞まであと一歩だったので、とにかく長所を強め、減点対象を無くすのが良いかと少々私がナーバスになっており、良い表現だと思ったけれどもこういう判断に至ってしまいました。

B君はこの曲の前に椿姫の主題による幻想曲を弾いていて、それでかなり細かくテンポの抑揚、強弱の抑揚をやっていたんですね。
ある時期はほぼ毎日録画してそれを送って貰って、2時間くらいかけて繰り返し聞いて毎回20項目くらいこれこれこういう理由でここをこう直そうと細かく修正してもらうみたいなことをしました。
そのお陰で多分そういった抑揚のつけ方がある程度馴染み、大序曲のこの箇所も同じような感じで弾きたいと感じたんだと思います。
ところがこの鬼がボツにしてしまったんですね。

この日は自転車で2時間かけて帰ったのですが、A君、B君と2日続けて似たようなことがあり「おかしいな、自分はそういうレッスンがしたかったのでは無いんじゃないかな」とシャーシャー自転車を漕ぎながら考えました。

多いに反省しながら帰ったのですが、A君のお母様からは「音の出し方とか曲の理解とか本人が気づくように導いてもらったという印象を受けました。」とメールが来たりB君のお母様から「今朝の練習時は今までの練習の時よりいい感じに聴こえて、「昨日のレッスン、何か特別な事あった?」と聞いてしまいました。」とメールが来たりしてあれれ???と?を沢山浮かべております。

今日のレッスンはお金を頂く価値があったのかと反省していたのに鬼のせいで2人とも良くなってるの???。

うーん…どうしたら良いのかよくわかりませんが、取りあえず寝て明日考えるとしてこれからこのすやすや寝てるマメさんを無理やりずらす鬼になります。
来月節分ですが鬼には豆が効きますね…負けてしまうかも。
あとマメさんのうちに来る前の名前はウリエルなんですよね…どんだけ邪に強いのよ君。
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