トロイメライ1

先日の発表会でR.シューマンのトロイメライを弾きましたが、あまりトロイメライに思い入れはありませんでした。
では何故弾いたのかと言うと、現在レッスンを受けている楽曲分析の発表会的なものが4月にあり、そこでトロイメライを演奏する事になりました。
楽曲分析のレッスンの成果を披露する場なので、ただ弾くだけだと聞いてくださった方にレッスンがどう活かされたのか伝わらない。
そこでレッスンを受ける前の演奏と後の演奏を披露し、比較できたら面白いのではないか。
そんな訳でトロイメライを課題と下レッスン受講前のサンプル演奏を作っておこうと考えたためです。

練習期間は2ヵ月ほどですが、人前で演奏する事を止めて以来なので7-8年ぶりかな?久しぶりに結構気合を入れていました。
といってもプロの演奏家の練習に比べたらゆるいもいい所です。
この前に生徒さんの足台を出し忘れるくらい軽くパニクっていたので、こう弾こうと決めていたような演奏はできませんでしたが、かえって自分の感覚そのままの演奏になった気もするのでレッスン前のサンプルとしては良いのかもしれません。

本当に短い曲ですが、この曲を仕上げていく過程でとても多くのものを学べました。
4月の発表の場で役立つかもしれないので具体的に書いておきます。

1.角の無い柔らかい音をどうやって出すか。
もともとはピアノ曲であるこの曲、10人程のピアニストの演奏を聴きましたが、どの方も全体的に角の無いとても柔らかい演奏表現で弾いていました。
トロイメライは「夢」「夢想」(白昼夢という解釈をする方もいました)といった意味で、フワフワした捉えどころのない、突然フレーズがホロリと崩れてしまったり、予期しない方向に進むような印象で、角の無い柔らかい音で弾くという選択を多くの方がするのはとても納得がいきます。

問題はこれをピアノやギターで弾く場合、角の無い柔らかい音を出すのが難しいということです。
角の無い音、柔らかい音は完全に同一ではない気もするので、後に区別するかもしれません。
下の画像は私のトロイメライの演奏の冒頭17秒ほどの音声波形です。
トロイメライ.jpg
上下に尖っている部分が音が出た瞬間です。
そこが最も音量が大きく、その後減衰して波形が小さくなる▷のような三角形を描いております。
角がいっぱいありますね…撥弦楽器の宿命ですがこの角をなんとかまろやかに、トロトロオムライスのようにしたいのですが、まあそれは不可能と言うか頑張ってこの波形です。
ピアノはC.ザックスの楽器分類学によるとギターと同じ弦鳴楽器となりますが、さらに細かく分類すると有鍵弦打楽器となるそうです。
この弦鳴楽器にはバイオリンも入ってしまい、バイオリンは山が左に倒れたような波形の演奏もできるのでザックスの分類はちょっと置いておきましょう。
というか分類はあまり意味が無いかな。子供に説明する場合、曲での使われ方でも変わりますね。
大事な事はギターもピアノも下の波形は出せないということです。トレモロ等の奏法で疑似的にはできますが。
画像2.jpg
有鍵弦打楽器であるピアノの演奏もギターと同じ▷の波形の連続となります。
それでも角の無い様に柔らかく聞かせるピアニストの方々の演奏技術にはもうただただ感嘆するしかない訳ですが、ピアノは鍵盤を押さえた後足元のペダルを踏むと押さえた指を上げても音が鳴り続けるペダルがあるんですね。
それで▷をややですがまろやかにできる場合もあります。
ギターは開放の音以外、弦を押さえた指を離したら音がきれてしまいます。
ささやかな抵抗で共鳴を利用したりはしますが。

エレキギターを弾く人はわかると思うのですが、エレキギターだとエフェクターという機材を使いピアノのペダル的な演奏も出来ます。
クラシックギターは残念ながらそうもいきません。
全く良くできた楽器ですよピアノは!!!時代を先取りか!

本当に良くできた楽器ですよ…

このペダルにより和声的な表現や旋律の歌い方の違いも出てくるのですがそれはまた後日。
あと、ペダルは便利なのですが、ペダルの指定があるのに明瞭なフレージングを表現をしたい場合、奏者の人は大変らしいです。
なんでもいい事ばかりではないですね。

まあそんな訳で柔らかい音をどう出せば良いのか工夫していたのですが、ここで以前にも書いた「オクターブハーモニクスの鳴る場所で弾く」というのが出てきます。
あの時はそこで弾くと出したい音が出せる、倍音が多いのかな?なんだか響きが良い、と言った感じで書いた気がします。
今回はちょっと違って、単純に弦が固定された場所から一番遠い場所、弦の張力が一番緩い場所で弾くことにより音の立ち上がりが少し遅くなるような気がしてここで弾いてみようとなりました。

「柔らかい音」で検索していたらこのサイトhttps://bbs.kakaku.com/bbs/-/SortID=19237976/が出てきて、かなり長いのですが1時間くらい読んでいて「柔らかい音=音の立ち上がりが遅い」説を試してみようと思いました。
「音の立ち上がりが遅い」というのを振動の発生のタイミングが遅いと解釈したので、上のサイトの方が言っているのとは違うかもしれません。
倍音も関係していると思うのですが、測定する機械が無いので不明です。

だから私のトロイメライはやたら右手の位置を気にしていたり、右手の位置が普通より指板上にある比率が多いです。
最初に書いたようにパニくっていたので、意識してできたのは半分くらいですが。

もう一つ角の無い柔らかい音を出すために工夫したのは指頭奏法です。
爪を使わず指先の肉だけで弦を弾く奏法ですね。
私は爪で弦を弾くことを基本の奏法として、あまり指頭奏法は使っていなかったのですが、今回出したい音を模索していたら自然とそうなっていました。
コップを硬度の高いペン(爪)で叩くのと硬度の低い段ボール(指先の肉)で叩くのでは段ボールで叩く方が明瞭ではない音が出ると言うのは想像できると思います。


これはピアノで考えると弦を叩くハンマーの素材をある程度変えられるという事で、実は凄いことをしているのかもしれません。
ピアノのハンマー素材を変えて音の違いを比較するというサイトがありました。



他に3,4項目あり、全部書くつもりでしたが、長くなったので今日はここまでとします。
それらは楽曲分析のレッスン前に自分で工夫したことで、レッスンを受けて学んだことは別なんですよね。
このシリーズ長くなりそうな。

ここに書いたものは仮説の積み重ね、実験的なものなので鵜呑みにしないでくださいね。
興味を持って試してみて使えそうだったら使ってみようくらいのスタンスでお考え下さい。

あと最初にトロイメライに思い入れは無いと書きましたが、今ではとても好きな曲になりました。

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