2023年1月29日の発表会の様子 追記

こちらに演奏動画のみの記事をご用意しました。

先日の発表会にご参加の皆様、ご来場の皆様、誠にありがとうございました。
ご遠方から来てくださった方もいて、終演後ロビーでお礼を言っていたらええ!?遠いでしょうにあなたも来てくださったのですか?みたいな。
本当にありがたいことです。

主催として反省すべき点は多々ありましたが、皆様のご協力や素晴らしい演奏のお蔭で無事終えることができました。

参加できなかった方、ご来場できなかった方、将来参加する方のためにその様子を綴っていきたいと思います。
なお、演奏動画をここでご紹介しても良いと許可を頂いた方は掲載しております。
ご協力ありがとうございます。
聴きに来られなかった方々や次回参加する方にとって大変参考になると思います。

自宅から近く、打ち合わせや手続きがしやすい、主催者用を含め楽屋が4部屋使える、スタッフの方がなんとなくうちの教室の発表会の流れを把握して下さっているのでとても有難いです。
今回もリハーサルで私がお願いする前に「先生、カメラの設定のため照明は本番と同じで客席を暗くしますか」と気を遣って下さいました。
コロナ禍で3年間利用していなかったのに…プロの凄さを思い知りました。

そんなサポートもあり、リハーサルも本番と同じ照明、反響板を降ろし、本番と同じ環境で演奏できます。
この時に演奏姿の記念写真を撮影、録音マイクレベルの調整、足台やイスの高さと譜面台使用の有無をチェックしておきます。

初めて参加する方は音を出して「おっほ」とホールの響きに驚いていました。
その表情を逃さずパシャリと撮影する私。

その後開演の13:30までは各々楽屋や会場外で自由に過ごして頂きます。
これは3年前の発表会の写真ですが、ゲームをしたりしていてもオッケーです。
目いっぱい練習するより、軽く練習したらリラックスして過ごした方が本番で疲れず演奏できると思います。


そして開演。
まずプログラムNo.0として私がビートルズのイエスタデイを武満徹さんが編曲したものを演奏し、簡単なご挨拶。
最初に講師演奏をするのは珍しいかもしれませんが、最初に弾くのはみんな嫌だろうなー、というのとお客様にホールの響きに慣れてもらうためです。
主役は生徒の皆様なので私の演奏は最後に。

今回聴きに来てくださった小学生のお子さんが皆様の演奏に対する感想を一人一人丁寧に書いてくださいました。
お客様の感想と言う形でそちらも掲載したいと思います。

1.(幼稚園年長) 
演奏曲:パウパトロール・オープニングテーマ/S.シモンズ
きらきら星/フランス民謡

《講師コメント》
ちょうど1年前にレッスンを開始しました。
最初はどれみが微妙に読めず、ひらがなの読み方・書き方から始めたりしていて、これでレッスン料を頂いて良いのかなーと自問していました。
1年経ったらきちんと音符も読めるようになっており、こんなに上手になってびっくり。
リハーサルでは少し緊張して最初上手く弾けない部分もありましたが、本番ではとても良く弾けていました。
3番目に弾いた子がお兄ちゃんで、新しい曲はお兄ちゃんが弾いてくれたり、優しく?教えてくれたりするそうです。
兄妹でギターを楽しんでくれてとても嬉しく思います。
現在はJ.S.バッハのメヌエット ト長調を私が初心者用に編曲したものに挑戦しています。
本当はピアノが習いたかったらしいので、そのうち「やっぱりピアノ習う―」とならないようギターの魅力を伝えていければと思います。

《お客様の感想》

音がはっきり聞こえました。小さい音と大きい音のバランスが聞きやすかったです。


2.(小学生)
演奏曲:いつも何度でも/木村 弓  
《講師コメント》
この曲でハーモニクスと6弦までのフルセーハに挑戦しました。
初めての発表会参加でしたが、全く物怖じせずレッスン以上によく弾けていました。
とても舞台度胸があります。
コロナ禍でもう3年近くオンラインでのレッスンのみですが、その環境にも負けずスラー、セーハ、ハーモニクスと一つずつ技術を身につけ、次は初めてのイ長調と声部を学ぶためビートルズのイエスタデイに取り組んでいます。
自分のペースでじっくりとギターを楽しんで欲しいです。

《お客様の感想》

メロディがなめらかで音がきれいでした。


3.(小学生)
演奏曲:小ロマンス/L.ワルカー

《講師コメント》
1番目の子のお兄ちゃんで、幼稚園年中の冬からレッスンを始め現在小学4年生。
私が足台を出し忘れてしまい、完全な状態で演奏する事が出来ず本当に申し訳なかったです。
出し忘れたとしても演奏中気が付けるだろうという疑問はあると思います。
とある理由で舞台から目をはなしておりました。本当にすみません。
次回からは本番中は何があろうと舞台から目をはなしません。

演奏自体はとても良く弾けているのが聴いて頂ければわかると思います。
この曲はABCの3つのパートに分けられ最後にAパートに回帰したようなコーダが付く構成です。
Aは主に低音が旋律を担うパート。
Bは高音が旋律で勢いがあり、アルペジオをラスゲアード(かき鳴らす)風に弾くことで演奏が映えるし、弾いていて楽しいと思います。
Cは同じく高音が旋律ですが伴奏がアルペジオでBとはまた異なる、切ない美しさがあります。
構成や表現、奏法が一曲でいくつも学べ、聴く人もギターの魅力が色々と楽しめる曲です。
ABC共に途中で主役となる声部が一部変わったりしますが、そのあたりの切り替えも良く出来ていました。
彼は12番目に弾いた方のラグリマが気に入ったらしく、自分から次はラグリマが弾きたいと希望してくれました。
既にレッスンで譜読みをしてもらい、最後までいけたので次の曲はF.タレガのラグリマに決定。
読譜能力の向上に驚きました。
小品ながら表現が難しいのでじっくりと完成させていきましょう。

あとこれからも妹さんに優しくギターを教えてあげてください。

《お客様の感想》
低音にボリュームがあってハーモニクスがきれいでした

4.(小学生)
演奏曲:エチュードOp.60-1/M.カルカッシ
《講師コメント》
この子も足台を出し忘れてしまい、大変辛い思いをさせてしまいました。
が、お母様に足台が出ていなかったことを知らされ、急遽後半の部にもう1度弾いて頂きました。
動画はご紹介できませんが、テンポ良く、軽快に弾けていました。
今は忙しくオンラインレッスンのみとなっていますが、よくそれでこの曲を舞台で弾けるまでになったとその努力に感心します。

この曲はクラシックギターをある程度きちんと学ぶ方は一度は弾いたことのある曲ではないかと思います。
カルカッシはこの前の作品59で教則本を書いており、その後この作品60のエチュード集となります。
そのエチュード集の第1曲目がこれです。
ABCの3つのパートと最初のAパートが少し形を変えて最後にもう一度出てくる構成です。
エチュードにも色々目的はありますが、この曲はクラシックギターの曲を構成するいくつかのパターンを紹介しながら練習できるようになっています。
Aパートは音階系のフレーズで1拍目表拍から裏拍にかけて大きくオクターブで跳躍し、その後階段を一段一段降りるように順次進行で下ってきます。
エチュード集の1番、ハ長調、音階系のフレーズという要素からJ.S.バッハのインベンション第1番の冒頭が思い浮かびます。
ここでは常に8分音符で目まぐるしく動く左手の動き、右手のタッチの学習をしました。
カルカッシのエチュード1-1.jpg

Bパートは支える低音がつき若干和声的な要素も含んだ内容で低音を押弦して旋律を押さえていく練習。
カルカッシのエチュード1-2.jpg
Cパートはアルペジオ(和音の分散)の練習。
ポジションも結構動き、そのあたりの読譜、押さえ方の練習もできました。
カルカッシのエチュード1-3.jpg
最後はAパートのような音階的フレーズと同時に鳴らす和音で締めます。

各技法がとても綺麗に順番に紹介されています。
それらを丁寧に練習し、演奏してくれました。
次はJ.S.バッハの「主よ人の望みの喜びよ」、を練習しています。
まだ小4でこの曲かー、怖い怖い。

《お客様の感想》

高音がきれいでメロディもなめらかでした。


5.(小学生)
演奏曲:11月のある日/L.ブローウェル
ラグリマ/F.タレガ

録画の経緯:この子は発表会約2週間前に骨折してしまい残念ながら当日の参加はできませんでした。
しかし、返金ではなく、完治したら練習し直し、家で録画しその演奏をここで紹介するという選択をしました。
骨折も完治し、発表会から1ヵ月と2週間経った、3月12日のお昼に1発録画で撮影してくれた演奏を皆様にご紹介します。
コメント:スーツがとても良く似合っていますね。
演奏時の雰囲気も出ていてかっこいいです。
12番目に演奏されたお母様と一緒に小学1年生の頃からグループレッスンをさせて頂いております。
4月から中学生という事で、小学生時代最後の演奏になるのかな。

細かいミスは気にしないでオッケーです。
先生なんて2カッコに行くところを1カッコに行ってしまったんですから。
この子の最も良い所は音が澄んでいて綺麗な所です。

爪の生え方や硬度なんかも関係していますが、やはり努力により身につけたタッチや左手も含めた音の鳴らし方が大きいです。
例えば彼が20歳までギターを趣味でなんとなくでも続けていたら、その音をお金を払ってでも聞きたいと感じさせてくれます。

11月のある日は彼の場合高音がクリアで目立つ分、冒頭の低音がやや支えとして弱くその魅力的な動きが聴く人に伝わりにくいと感じ、低音だけ弾いたり重さを乗せる練習をお伝えしました。

その後の5ポジションに移った所はビブラートや和音の特徴、私の考える自然な響かせ方を伝えましたが、綺麗に弾けていると思います。
イ長調への転調後(1:35くらい)は前半とは異なる推進力のある展開とリズムがよく活かされていると思います。
彼くらいの年になると調性等も少しずつお伝えし始めます。
まだ中々理解しにくいとは思いますが、それでも演奏でその違いを伝えようとしてくれ、それは皆様に少しでも伝わったのではないかと思います。

ラグリマはうちの教室では基礎技術と表現、中でも強弱、音色、そして特に緩急の変化のつけ方を学ぶ目的で練習してもらっています。
だから純粋に芸術的な表現を目指すというより、学習教材のような感じで少し表現を大げさにしてもらいます。
それができたら次は自分の好きな表現を目指してもらう流れです。
ある意味第1段階の卒業試験のような曲ですね。
第1段階卒業おめでとう!あと小学校も卒業おめでとう!

最近生徒さんから伺ったのですが、この曲はとあるコンクールの課題曲?になっているらしいです。
あまり多くを語り、万が一それをご覧になったコンクール参加者の方に負の影響を与えたくはないのですが少しだけ。
最近タレガについて書籍を2冊ほど読んだり、シャントレルから出ているタレガ全曲集を購入しました。
まずタイトルのラグリマは後付けで、タレガはこの曲にプレリュードという名のみ付けました。
DSC_2555.jpg
タレガの名高い弟子の一人、ホセフィナ・ロブレドと言う女性が、ラグリマ(涙)とタイトルをつけ出版したそうです。
詳しくは「手塚健旨著 フランシスコ・タレガ伝」や「アドリアン・リウス著 手塚健旨訳 フランシスコ タレガ」を読んでみてください。
1891年に亡くなった娘さんのために書かれた、1893年のロンドン公演の際に望郷の念に駆られてその気持ちを即興で奏した、諸説ありますが、それは聞く人それぞれ、弾く人それぞれで解釈して良いと思います。
あまり二元論的に区分しなくても良いかと。
例え後者だとしても1年半前に亡くなった娘さんの事を想う気持ちも当然含まれていると思うのです。

まあそんなタイトルについての逸話は置いておいて、タレガはこの曲にプレリュードと名付けた、というのが重要。
と書いていたら演奏していた子置いてきぼりになってしまったのでこの話はやめます。なんだそれ。

前半はホ長調なのにタレガは6弦ミを全然使用していません。
唯一出てくるのは8小節目のバロックの終止を思わせるオクターブの動きでの6弦ミだけ。
属和音の根音としての5弦シも7小節目にしか出てきません。
※2,4小節目の5弦シは内声としての役割と見ています。
バスが大体4弦なんですね。
転調後は6弦ミが3小節連続で使われています。
それがなんだ?と思うかもしれませんが、タレガは前半に軽さを求めているのかなーって思いました。
5-6小節目の響きに切なさを感じたりしましたが、基本はfelizかなあって。
それを彼に伝えました。
重くなっちゃダメかもって。

ホ短調に転調後は例の3連続6弦ミやその後もバスに5,6弦が出てきて、重くて良いよーと伝えました。
なんだか悲しい感じよねーって。でもあんまり強く弾くと悲しいじゃなく怒りになるわよ!って。
転調後の2,3小節目1拍目は解釈が分かれるかもしれません。
私は1拍目がフレーズ終わりで収めるため弱く弾いて欲しいと伝えました。
そんな独特な解釈にもかかわらずしっかり練習し再現しようとしてくれて感謝です。

6,14番目に弾いてくれた子(同一の方)以外、子供の生徒さんはコンクールを目指すでもなく、他にもっと大事な勉強、趣味や習い事がある中ギターを学び、これくらい弾けるようになってくれるというのは本当に嬉しい限りです。
そう言うスタンスでもこの子達が高校生になったら、趣味で大聖堂や魔笛を始めとするクラシックギターの名曲が弾けるくらいにはなるのかもしれない、という予感がしました。
そしてそれより私が個人的に楽しみな事は、音楽をより多くの視点で楽しめる子達になるのでないかと。
そんなワクワクを与えてくれる演奏に深く感謝します。
ありがとう!

《お客様の感想》

例えミスが合っても良いのでもう一度この子の演奏を聞いてみたいと思った。

自分が弾いてこういう風に聞こえていたら良いなーという演奏だった。

感激した、自分も頑張らなきゃと思った。



6.(中学生)
演奏曲:エチュードOp.60-3/M.カルカッシ

コメント:聞いて頂ければわかると思いますが、上手いですねー。
舞台度胸もあり、安定しています。

良い意味であまり書くことがないのですが、無理やり書いていきます。
手伝ってくれた妹が発表会が終わった後に「兄ちゃんあんなに上手い人達に何を教えてるの」と言っていたのでその辺でも書こうかと。
この曲は初めから終わりまでアルペジオで構成されています。
特徴としては1,4拍目に低音が来ることが多くそれがリズムを作り、次の小節の1拍目の低音に効果的に繋がっています。
2,3拍目に高音の旋律が配置されていて、3拍目の音が余韻を持って伸び、響きます。

時々低音1,4拍、高音2,3拍のパターンが崩れ、そこが一つの魅せどころです。
そんな事を伝えて練習してもらいました、お兄ちゃんは。
基本パターンを活かしたうえでイレギュラーな部分も良く弾けていると思います。
他にも盛り上げる頂点を設定していかにそこに至るかやイレギュラーな部分の歌い方などをお伝えしました。

他にもいくつかお伝えしたのですが、この曲は某コンクールの課題曲であんまり書くとライバルに塩どころかお米や味噌や野菜にお酒と傘地蔵のようになってしまうかもしれないので控えます。

《お客様の感想》

音がはっきりしていてデクレッシェンド、クレッシェンドがなめらか。僕もこんなふうに弾きたいです。


7.演奏曲:エチュードOp.35‐22/F.ソル
     エチュードOp.6‐12/F.ソル

《講師コメント》
もう10年かそれ以上レッスンに通って下さっています。
よく「好きな曲を弾いていると止まらなくなっちゃいますね!」と仰って、本当にギターが好きなのが伝わってきて嬉しいです。
1曲目は「月光」の愛称で親しまれるソルのエチュード。
少し崩れはしましたが、この曲の魅力である静かで美しい旋律、3声の弾き分けなど良く弾けていました。

2曲目は安定して最初から最後まで弾けたと思います。
この曲は難しいんですよねー。
旋律が柔らかく伸びつつ、内声が3度の和音で細かく動くことが多くて。
そこが美しいのですが。
イ長調からイ短調に移るときの雰囲気作りもやりましたっけ。
聞いていてその辺りのレッスンを思い出し楽しくなりました。

後半の主調に戻る転調部も難しいのですが、魅力的に弾けていたと思います。
レッスンで「この転調上手いですねー、感心します」と楽しそうでした。
転調前の移行部の流れの妙が好きで、つい練習したくなってしまうという印象でした。
ソルも作曲家冥利につきるのではないでしょうか。

この方はこの2曲以外にソルのエチュード(セゴビア選)を2曲とタレガのグランワルツを練習したり、並行してかなり沢山の曲を練習しています。
やっぱり好きと言うのが一番大事だなあと実感させてくれます。

《お客様の感想》

和音がやわらかくメロディがなめらかでした。


8.演奏曲:ひまわり(love thema from sunflower)/H.マンシーニ 江部 賢一編
《講師コメント》
今回最初は出る予定ではなかったようですが、私がお願いして参加して頂きました。
理由は音が大きく、良く響き、深みがあり綺麗だからです。
マイクの録音レベルを個別に変えていましたが、ボリュームつまみが普通は3時、音が小さい方は4,5時、この方は唯一1時でした。

上手い人は沢山いるけどこういう音を出せる人はなかなかいないのではなかろうか、ぜひこの音を皆さんに聴いて欲しいと思いスカウトしました。
マイクや録音機材にはそこそこお金をかけていますが、この音の魅力はやはり生でないと伝わらないかもしれません。

この方はほぼ独学でギターを学び、3年前くらいにレッスンを始めました。
ギターはほぼ独学ながら、ご友人とギタートリオでたまに演奏の場で弾いていたりして、アンサンブルをやってきた方ならではの恐らくリズムに起因するフレーズの感覚が体に備わっていると感じました。

驚く事にソロの舞台は初めてという事で、緊張によるミスもあったようですが、舞台の響きを楽しんで弾いて頂けたようで何よりです。
今年は音色の引き出しを増やし、更に表現の幅を拡げてもらおうかと画策しております。
そうなった時の演奏がとても楽しみです。

《お客様の感想》

ひまわり畑で子供が遊んでいるのを想像する演奏でした。ひとつひとつの音がよく響いていました。


9.演奏曲:ラ・ミラネーゼ/F.クレンジャンス
ロンドンデリーの歌/アイルランド民謡 武満 徹編
《ご本人のプログラム用コメント》
ラ・ミラネーゼはクレンジャンスが稲垣稔さんの為に書かれた曲で、稲垣稔さんのCD『songs』に入っています。
初めて聞いた時はA.ラウロ的なワルツなのでクレンジャンスの作品とは思いませんでした。
しかし、その物悲しい旋律の中にもクレンジャンスのエスプリがちりばめられていて
聞いているうちに好きな曲の1つになりました。               

《講師コメント》
プログラム用のコメントが素敵なので抜粋させて頂きました。
エスプリと言う単語でコーヒーが浮かんできたのは内緒です。

この方は1年半前くらいにレッスンを始めたと記憶しております。
来た時から技術的にもお上手でしたが、曲の特徴をよくとらえて弾くことが得意でした。
年末年始お仕事が忙しく、発表会前1か月半ほどレッスンができなかったり、発表会2日前まで出張で1週間ほどギターが弾けなかったりと、かなり練習環境が厳しかったにも関わらずとても良く弾けていたと思います。

2曲共、旋律と対旋律の動きの弾き分け、和音の響きの特徴をとらえての繊細な表現、テンポは2曲で異なりますが音楽の流れに相応しい速さの揺れの作り方等が難しかったです。
それらが整っているとどうなるかと言うと、「聞きやすい」とか「その曲の魅力が聞いている人に伝わる」となるのではないかと。
この方の演奏はまさしくそういった点が当てはまっていると思います。

驚くことにこの方も舞台でソロで演奏する機会はほぼなかったそうです。
8番の方と同様に今年は音色の幅を拡げ、より多彩な演奏を目指して頂こうかと思います。

あとは舞台慣れのため気が向いたら楽器店が主催する演奏会などに参加したりしても良い気もします。
今回は参加していなかったけれども、過去にコンクールで入賞しているような方(入賞時は別の先生についていて入賞と私は無関係)はとある楽器店の主催する定期演奏会に自主的に参加していたり、同じく今回参加していませんがジャズギターをメインでやっている方は〇〇区音楽フェスティバルに参加したり演奏披露の場は結構あるようです。


《お客様の感想》

ビブラートが美しく波に乗っているみたいに軽いかったです。ロンドンデリーを弾きたいと思いました。


10.演奏曲:エチュードOp.60-1/M.カルカッシ
《講師コメント》
4番目に弾いた方と同じカルカッシの重要な曲です。

うちの教室に来る前に少し別の教室で学んでいてうちの教室にいらして1年くらい経ちました。
外国からの留学生にも関わらず、日本語で楽典を学んだりタレガに関する書籍を買って勉強したり、色々な方のコンサートを聴きにいったり、とても勉強家です。
私も見習わなければ。
まだギター歴は長くないですが、色々な曲に取り組んだり、楽譜にコード名を書いて和声から演奏につなげられないかというアプローチをしたり、レッスン外でも積極的に学び、上達が早そうです。

実は私もクラシックギターを学び始めた初期に同じような事をやっていました。
これはその当時に私が使っていたカルカッシの25のエチュード楽譜集、第2番の楽譜。
字が汚いことは見逃してください。
IMG_20230222_120510.jpg
カルカッシのエチュード2.jpg
白い楽譜は今作ったこの曲の最初の2小節。
昔の楽譜のコード名の書き込みは1小節3拍目でいきなりコード名を間違えています。
1小節目1ー2拍目はイ短調の主和音。
3-4拍目は主音の保続で低音に主音ラが使われており、そこに属和音が乗っているので3拍目はE7/A。
別の言い方だと属7の和音根音省略ⅰ(第1音)の保続となります。

最低音の主音の保続は雰囲気を安定させたい時に使われることが多いです。
今回はその要素も含みつつ、主な意図は別にあるかもしれません。

2小節目がラドミラとイ短調の主和音で最も安定する基本形なので、1小節目の3拍目の最低音に主音の保続でラを持ってこず、6弦開放のミを弾くと2小節目で完全終始感が出てしまいます。
その先に繋がりにくいのですね。
もっと終止を先に考え、長い長いフレージングにしたくてここは主音の保続にしている気がします。
あとは5弦のㇻと1弦のソ♯がぶつかって良い感じに不協和になっています。
そのぶつかる4拍目にちょうどcresc.が書いてあるので、その不協和で不安定な響きに上手く乗ってフォルテまで音量を拡大して欲しい、という所でしょうか。
長々と申し訳ないのですが、この方のアプローチの目指す先を少しご紹介しました。
まあそんな感じで和声分析は演奏表現に役に立つとは思うのですが、結構勉強が必要なので諦めず気長に学んで欲しいです。
私はこれは無理だと早々に諦めましたが、昨年からもう1度きちんと作曲の先生に習い始め、今とても勉強が楽しいです。

あとは分析も大事ですが、一番大事なのは和音や音の流れ、強弱、揺れ、テンポと言った音楽を形作る要素を把握する「耳と経験」だと思うのでそのあたりを鍛えればどんどん良い演奏が出来るようになると思います。

こういった能力は育てるのに時間がかかりますが、諦めなければいつか必ず身につくはずです。
技術はお若いのでどんどん身につくと思います。

《お客様の感想》

柔らかい音とクリアな音のバランスが良かったです。和音もはっきり聞こえました。


11.演奏曲:アルハンブラの思い出/F.タレガ
《講師のコメント》
この方もずいぶん長くレッスンさせて頂いております。
7-8年くらいかもう少し長いかもしれません。
こういう言い方はもう古いのかもしれませんが、クラシックギター曲の中で愛のロマンスと並んで有名なアルハンブラの思い出に挑戦されました。

低音の作る和声やリズムと、トレモロと呼ばれる高音の連続による疑似的な伸びのあるゆったりとした長い旋律が特徴的な曲です。
全体を通して低音がしっかり音楽を支えており、テンポも130かもう少し上くらいの速さで安定して16分音符で弾けていてプロの演奏の速さとはいきませんがそれに近い感じで弾けていたと思います。
イ短調からイ長調への転調での雰囲気の変化も良く出来ていました。

そう言った音楽的な部分での良さとは別にフォームが安定していて、速いトレモロの中で3連符のスラーがあったりするのですが、力まずにフォームも崩れず弾けていたのが日頃の練習の丁寧さを感じました。

次はカヴァティーナとポンセのバレットに挑戦です。
今度はまた別の難しさがありますが、その穏やかな雰囲気や使われる和声の魅力、多性的な音の流れを楽しんで頂ければと思います。

《お客様の感想》

トレモロがとてもきれいで低音がよく響いていました。最後の和音が柔らかくてはっきり聞こえました。


12.演奏曲:11月のある日/L.ブローウェル
ラグリマ/F.タレガ
《講師コメント》
小学生の息子さんと2人、グループレッスンのような形式で初心者から始めて6年目。

真面目にコツコツと腕を磨いてこられました。
息子さんも同じ2曲を練習していて、お互い良きライバルとなっています。
声部の弾き分け、テンポの揺れを意識的にコントロールする、転調や和音の雰囲気を感じて表現する、作曲家が開始の音から終わりの音までどういったストーリーを作っているか、と言った結構難しい事をレッスンで細かくお伝えしました。

11月のある日は音の流れがまっすぐだったり、いったりきたりふわふわしたり、かと思ったら転げ落ちるように終止に向かったり、転調後リズムよく駆け抜けたり、イ長調のリズムは残るが明るい陽射しの中に陰が差すようにイ短調に戻り名残を惜しみつつ収束したり、様々な顔があります。
そういった雰囲気一つ一つをしっかり理解されていると思います。
レパートリーとして引き続き練習して、数年後またぜひどう消化したか聞いてみたいと思います。

この方のラグリマを聴き、プログラムの3番目の子は次はラグリマを弾きたいと、練習を始めました。
そう言う方が出る通り、ラグリマの儚いような繊細な美しさ、小品ながら多性的な構造の音の流れ、といった魅力を良く引き出せていると思います。
うちの教室では、ラグリマは表現や技術の基礎試験曲の様な扱いをしています。
だから結構レッスンも厳しくなり、音1つに対しても要求をしたりしましたが、次の方に繋がるとても良い演奏をありがとうございました。

息子さんは現在骨折を治して猛練習中。
彼も同じ2曲を弾きますが、レッスンで同じ内容を伝えているにも関わらず音色やテンポ感等異なっているので楽しみに待っていてください。

《お客様の感想》

低音も和音も響きのある音でした。ビブラートが綺麗で小さくても大事な音は、はっきり聞こえました。


13.(中学生)
演奏曲:ファンタジー/S.L.ヴァイス
《コメント》小学1年生になったばかりの4月からレッスンを始めて8年目です。
この曲はもともとリュートの曲で原曲はハ短調。
ホ短調の版もありますが、6弦をレの調弦の勉強と、途中出てくるオルゲルプンクトと呼ばれる、属音(ニ短調だとラ)の低音の保続が響きやすいのと、全体で主音と属音が低音開放で共鳴も含め響きが良いのでニ短調版になりました。

この子は指頭奏法で、爪に比べやや音が飛ばなかったので1年かけて音の鳴らし方をかなりしっかり伝えました。
まあうちの昨年のテーマの一つが全体的な音量を上げるだったので皆さんそうなのですが。
今回とても明瞭で、良い響きで弾けていると思います。
初期のファンタジーはコンサートの初めの指ならし、各音の確認的な感じで使われていたそうです。
この曲がそういう意図を含んで作曲されたかはわかりませんが、前半色々なポジションで絶え間なく動きつつ進行していく様はなるほど当てはまるかも。
それだけでなく音の動きがとても美しいですね。
高い音と低い音の2声または3声の進行で構成され、各声部の進行をコントロールして弾くのは難しいですが、彼は性格が丁寧なのでかなりしっかりそれができています。

後半雰囲気が変わる所はフーガ的と言いますか、同じ構造のフレーズを声部を変えタイミングを変えて演奏するような構成になります。
説明がざっくりし過ぎですが、カエルの歌の輪唱を複雑にして一人で弾く感じというと伝わりやすいかな。

前半以上にリズムが複雑で、一つの流れを追っているともう一つの流れが疎かになってしまったりと各声部の進行が更に難しくなります。
練習過程でこの音が次の音に進行する、その前に別の音が次の音に繋がって…と考えなくては綺麗に弾けません。
このあたりは技術、丁寧な練習に加え、自分の音が聞けるかどうかが鍵になってきます。
彼の演奏を聴くとそれがかなり出来ているのが伝わってきます。

終止感や和声の進行なども理解があって、まだ中学2年生なのに曲の特徴をとらえるのが上手くなってきました。
おじい様がクラシックギターを弾いていてそのギターを受け継いだのですが、次の曲はおじい様が好きなソルのエチュードOp.35‐22、通称「月光」と愛のロマンス(ド・ヴィゼーのサラバンド付き)。
きっとおじい様も喜んでくれると思います。

《お客様の感想》

デクレッシェンド、クレッシェンドがなめらかで音がクリア。ひとつひとつの音がよく響き、プロの演奏みたいでした。


14.(中学生)
演奏曲:大序曲/M.ジュリアーニ

《講師コメント》
6番目にカルカッシのエチュードを弾いた子です。
演奏もそうですが、その姿も風格があると言うか雰囲気がありますね。
この曲はこの子が前から弾きたかったという事で選びました。

前奏のイ短調の後半のわかりやすく緊張感を増すタイプの属音の保続の弾き方をホラー映画で例えたり、管弦楽的な視点の弾き方などを伝えたりした事が蘇ってきました。

古典曲の中でもフレーズの区分けがはっきりしているこの曲。
既に技術はあるので、音楽の整理整頓の仕方をレッスンでお伝えした印象です。

あ、効率的な音の大きく聞こえる奏法もお伝えし、今回それがかなり活かされていました。
上に書いたように8番のひまわりの方が一番音が大きかったので録音レベル1時、この子はそれより少し下の2時だったのですが、聴きに来てくださった方に一番大きい音が出ていたと感じた人は誰でした?と伺った所、この子の名前が挙がりました。
理由は恐らく強弱の差がかなりあったからかと。
そういった強弱の出し入れも整理整頓したうちの一つです。

あとはこの管弦楽バージョンの「大序曲」の楽譜とmidi音源が大変参考になりました。
作った方は天才かと思いました。
世の中には凄い方がいるものですね。
この曲はとても技術的で、弾き応え、聞き応えがあり派手ですが、技術に振り回され一つの音楽として完成させるのはとても難しい曲だと思います。
それがこの管弦楽バージョンだとこの曲の魅力がすんなり入ってきます。
これを目指そう!とレッスンではお伝えしました。
勿論ギターで弾くからこその魅力なども伝えました。

閉演してお客様にロビーで挨拶していたら、彼の演奏を絶賛する方が離してくれなくて感想を直接聞かせてあげたかったです。
もう一度演奏を聴きたいという方も多かったですね。

これは彼の課題ではなく私の課題ですが、まだフレーズのメリハリをつける、整理整頓する余地はあるのでそれを意識して練習してもらえるよう、いかに伝えるかを工夫していきたいと思います。
発表会の締めに相応しい演奏をしてくれてありがとうございます。

《お客様の感想》

低音が音は大きくないのに、はっきり聞こえるました。はやく弾いていても、全部の音がクリアでよく聞こえていてすごい。サウンドホールの上で弾いていないのに、柔らかい音が出ていて不思議。


《終わりに》
一言で言うと「みんな上手かった!!!」これに尽きます。
音も良いし、レッスン歴に応じて変わりますが音楽の構成も理解しているし、なによりこう弾きたいという気持ちが伝わってきました。
始まる1ヵ月前くらいから「皆さんの演奏を響きの良いホールで聴きたいなー、」といった、ファンが、好きな演奏家の演奏会を首を長くして待っているような感覚でした。

うちは長く習って下さる方が多く、小学1年生の時から習ってきた子がもう高校受験の話をしていたり、時の経過に驚くと共にその成長過程を感じられとても嬉しく思います。
その技術や音楽に対する理解が増していくのもとても楽しく、今回は今までで一番それを感じました。

そしてそれと対を成すように大人の方達の演奏レベルの向上。
生意気ですみませんが、妹は「大人の方々の演奏は年季が入っていたねー」と言っていました。
年季が入った演奏とは具体的に何かと考えたのですが、こういう風に弾きたいという想いがまずあり、「そのためにこういう工夫をしよう」、「こうしたらどうだろう」と言った試行錯誤を繰り返した結果得た技術が反映した演奏ではないかなと。

つまりレッスンを受けるというある意味受動的な活動に留まらず、それを消化し、自分で積極的に活動していった結果ではないかと。
たまに子供でもそういう子はいますが、やはり色々な経験を積んできた大人ならではの学習方法だと言えます。

そう言った大人の学習方法の結果である演奏を子供達に聞かせたくて、今回最初は出る予定の無かった方をスカウトしたり陰で暗躍しました。

13番目に弾いた子のおじい様がお孫さんにギターを託したような行為の範囲が拡大し、他人同士でも世代を超えたギターを通しての繋がりが生まれたらと思います。


という私の気持ちはありますが、そんなものは気にせず引き続き皆様クラシックギターを楽しんで頂ければそれが一番です。
常に楽しいかどうか、そこを一番大事にして今後とも宜しくお願いいたします。

皆様本当にお疲れさまでした!!!


で、終われれば良いのですが私の演奏もご紹介せねば。気が重い…
さて、私は最初にプログラム0番としてイエスタデイ、5番目にトロイメライを弾きました。
まずはビートルズのイエスタデイ武満徹編。
この曲は弾いていて星を撮っているようでした。
コロナ禍で控えていますが、私は星の写真を撮るのが好きで北海道に行ったり、沖縄に行ったり、富士山にいったり、北アルプスに行ったり。
DSC_8689記名.jpg

そうすると流れ星を結構見るのですが、当然瞬く間に消えてしまいます。
たまに火球と呼ばれる大きい、軽く糸を引く流れ星が見えるのですがそんな時「ん?今とんでもないものを見たような」と感じます。
恐らく撮影したのは10年前くらいなのでこれが火球と言い切れませんが、それっぽいものです。
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この曲は武満徹さんという日本、と言うより世界を代表する作曲家の方が編曲したのですが、音の配置、響きがその火球を見た時のようだな、と感じました。
曲中こういうミとファ♯が裏拍でぶつかっている所がありますが、1瞬「ん?今何か凄い事が起こったような」みたいな感覚になります。
イエスタデイ和音.jpg
この曲は皆さん和音をジャララーンとばらして弾くことが多いのですが、今回、そういう一瞬で過ぎ去る響きを聴いてもらうために和音を崩さずに同時に鳴らす事を試してみました。
その和音の構成音のバランスなんかも好みを探しましたが、そのあたりもラーメンのスープ作りみたいで楽しかったです。

ただ、この弾き方をすると流れが停滞しやすい気がします。
だからみんな崩しているのかなあ。
緩急をつけたりテンポの設定をシビアにしようと決めたりしていましたが、その辺りが舞台では全然できなかったのが心残りです。
まあ次上手くやれば良いですね。
あとは音色について実験したりもしましたが、今回私は脇役。
長くなると申し訳ないのでそれについてはここをご覧ください。


次にトロイメライ。
これも音色について色々試しました。
そのあたりはこちらをご覧ください。


この曲は楽曲分析を習っている作曲の先生の催す、4月にある発表会で弾くための曲。
まず、楽曲分析のレッスンを受けない状態で独学でどこまで演奏を作って行けるかという実験をしました。
だからここからが本番ですね。取りあえずまだハッピーな感じが足りない。

今は2回この曲の楽曲分析のレッスンも受け、この曲に対するイメージもまた少し変わってきました。
作曲の先生の発表会では15-20分ほど使い、資料を配り、舞台で分析したレポートを説明しながら演奏するという、未体験な事を行う予定です。
4月15日(土)14時開演、場所は蕨市立文化ホールくるるの多目的ホールで行うそうです。
同じフレーズをピアノとギターで弾き比べてどう聞こえるか、と言ったことも披露する予定なのでご興味があったらお越しください。
もちろん入場無料です。

こんな感じで今回の演奏曲も発表会で弾いたから終わり!ではなく私のように更に続けて磨いていって下さいな。

それでは長々とありがとうございました!
皆様本当にお疲れさまでした!!!
次回もとても楽しみです。

手伝ってくれた母と妹に深く感謝を。


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