諦めていたものが手に入ると戸惑う

対位法はあれから毎日全音符対全音符、2分音符対全音符、4分音符対全音符、移勢対位法、華麗対位法、転回対位法をそれぞれ上声一つ、下声一つずつこなしています。
一応その先の模倣やカノン形式まで読んではいますが、一気に進んだ分見落としが無いか省みなければどこかで必ず躓くだろうなあ、と物凄く進みたいけど我慢しています。

作曲の手法として、下の楽譜のように大きく跳躍したら飛ばした音を埋めるように順次進行することが推奨されていますが、それと似ているかもしれません。
シンフォニア3.png
皆様におなじみのカルカッシのエチュード第1番もそれですね。

対位法は10度の転回対位法で躓いていましたが、なんとか突破できそうです。
やっぱり独学で対位法を学ぶのは中々厳しいですが楽しい。
定旋律に音を禁則に触れないように配置していくのはパズルのようですが、ある種の作曲、あるいは編曲と言って良いかと思います。
多分それが楽しいのでしょうね。

せっかく作曲の先生に学んでいるのだから楽曲分析だけでなくいつか作曲も習おうかなあ、なんて考えが浮かんだりしています。
そんな妄想をしつつまずは目の前の対位法。
楽しいもののやはり難しく最近夢の中でも対位法の課題をやっています。
それが禁則に触れると首をコキャッとしてくるお化けが出てくるという恐ろしい夢で…
5回くらいお化けが出てコキャッとされる寸前で「うわっ!」って起きたんですが、寝室のドアをカリカリカリカリする音がするのでまた「うわっ!」ってなりました。
続く「ニャー!」という鳴き声でマメさんだとわかりましたが心臓に悪い。

まあ対位法はそんな感じで楽しいと苦しいの両方を味わえる素敵なものです。

現在の楽曲分析はJ.S.バッハのシンフォニア第13番イ短調が課題。
前のインベンション第13番はどちらかというと和声的な曲ですが、今回は旋法的な曲と言えます。
シンフォニア4.png

本当はヘ音、ハ音の2段譜なのですが、3声のシンフォニアは3段譜にした方がわかりやすいと思い作っちゃいました。
リュート組曲第2番のサラバンド(原曲ハ短調、ギター演奏用にイ短調に移調)、インベンション第13番イ短調、シンフォニア第13番イ短調、BWV1000のフーガ(原曲ト短調、ギター演奏用にイ短調)とイ短調縛りでやってきた結果、どうも楽譜をパッと見てド♯とシ♭があるからニ短調に向かっている、とかレとファに♯が付いているのでドッペルドミナントでホ短調に向かっているとか感覚的にわかるようになってしまいました。
考えなくて良くなったんですね。
物凄い不思議な感覚でなんだこれなんだこれ、とその日は踊ってしまいました。
なんかゴリラっぽい踊りです。
別の時代の曲でもイ短調の曲を引っ張り出して弾いたところ、アグアドの序奏とロンドなんかもそんな感じ。
「あっ今この調への転調のための移行部だから軽やかに弾こ」とかまで何年ぶりかに弾いたのに弾きながらそういった考えが浮かんできてしまう。
弾きながら笑ってしまうくらい楽しくてその日もまた謎の踊りを踊ってしまいました。
まあイ短調以外はまだ考えないとダメなんですが。
あとできるのは古典派くらいまででそれ以上新しくなるとパッと見でわからない和音も出てきてしまいます。
これくらいは他の講師の方や演奏家の方は出来て当たり前の能力なのかもしれません。
私は音楽の能力が低いのでようやくかよ、って感じなのかも。
そう言う話って友人ともしたことないなあ。

この話を作曲の先生にした時「先生はやはりこれが24調でできるんですか?」と質問したら「はい」と返ってきて予想はしていたものの恐ろしくなりました。
プロの作曲家というのは本当にすごい能力をお持ちなんだなあ。
インベンションあたりでそんな事がありました。

それでじゃあ聞くだけで転調の気配や調性がわからんものだろうか、と今回のシンフォニア第13番はレッスン1週間前まで楽譜を見ずに聞くだけで分析する事に挑戦しました。
聞いて聞いて聞きまくってノートに何小節目d-mollみたいに調の変化を書きだしてまあまあ良いかな、とある程度判断できたところで楽譜を開いたらほぼ合っていました。
1日1ー2時間、計30時間くらい同じ曲を聴音課題として聞いたので、流石にこれで間違っていたら才能の無さに泣いてしまいますよ。
8月くらいから無謀にも平均律クラヴィーア曲集で聴音しようと毎日聞きまくっていましたし。
3声、4声の曲の聞き方もなんとなくわかってきました。
全部ドレミで聴こうとしていたのですが、私には無理だとわかり、ソプラノは主題上行進行、アルトは対位主題下行進行、テノールは主題の転回上行進行、バスは通奏低音的上がったり下がったり、と塊で全体を聴きつつ主題はドレミで聞くみたいな感じでしょうか。
凄い人は一音一音4声、5声全て聞こえるのかなあ。

そうなると平均律クラヴィーア曲集も今は主題でここが嬉遊部(経過的で次の調に移るための移動の箇所)でみたいなことが聞いていてわかる様になりました。

あとはシンフォニアに戻りますが、第13番は16小節目からバスとソプラノで声部を引き継ぎつつ順次進行で3オクターブを超えて上行していきます。
下の楽譜の青い音から上がっていき赤い音同士で声部間の連結があります。
シンフォニア.png
さらに上がり第2提示部で主題をC-durで演奏する事になります。
シンフォニア2.png

こういう特徴的な箇所で音楽漫画でよくあるような曲を聞きながら「なんとかかんとかでなんとかかんとかだ」みたいな事を考えられるようになりました。
具体的には「16小節バスからの順次上行進行がソプラノに移り3オクターブ以上に渡り登っていき 非常に美しい。 この長い上行から新しい何かを生み出そうというような意志を感じる」みたいな。
これはのだめカンタービレなどを読んでいるとモノローグで出てくるのですが、「こんな事ができたら凄いけど無理でしょ」と自分には絶対無理だと諦めていました。
あっこれが出来た時は外で聴いていたので踊りませんでした。

まあそんな訳で色々自分には無理だと思っていたことが良く分からないうちに出来るようになってきたのですが、分析脳というか、曲を聞くと今何調で主題がこれで移行部はどこだー、何調に変わる?みたいに聞きながら常に考えてしまう癖がついてしまいました。
これが辛くてあんまり曲を聞くことを楽しめない状態。
多分そこを突破すると考えなくても聞きながらパッとわかる様になるのではないか、と思うので早くその段階に達したいのですが何年かかるかなあ。


まだまだ能力的には未熟で日に寄って出来ない事もありますが、自分はもうたいして成長しない、と思っていたのに色々変わってきて驚いた一年でした。
やはり作曲の先生の手腕なんだろうなあ。
先生、1年間本当にありがとうございました。




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