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ミュージアム・コンサート

東博でバッハ vol.68 鈴木大介(ギター)

無伴奏チェロ組曲&リュート組曲(ギター版)全曲演奏会 第二夜

を聴いてきました。


前回はそのあまりの技巧や声部の独立性、和音の響きに驚いてしまいました。

それらの事を考えていたら木を見て森を見る事ができなかった。

また、私の心構え不足で全体の音楽鑑賞に集中できなかった感が合りました。


前回の反省点。

恥ずかしながら私が多弦ギター(通常の6弦ギターより弦が多いギター)を聴き慣れていなかった。

特に多弦ギターでのバッハの演奏を。

前回が生で聴く初めての多弦ギターのコンサートでした。

それにより、弦は8本だと見えているのに6弦ギターで出せない音域の音が出てくると少し混乱してしまった。

だから今回、非常にもったいないけれども、ほぼ目をつぶって聞こえてくる音楽に集中しました。


そうして臨んだ結果、鈴木大介さんの奏でる音楽全体をしっかり聴く事ができて、素晴らしい体験となりました。

リュート組曲第2番のフーガとサラバンドは分析の予習もしていましたが、フーガの厳格的な主題提示部、主題の反転の下行進行の明瞭さ、緊張から解放された嬉遊部、それが再び主題提示に向かう際の緊張の高まり方、最高でした。

聴いていて緊張感が伝わってきて力が入ってしまいました。

今朝を起きたら若干の筋肉痛に。

でもそれで良いのです、多分。

カントも判断力批判の中で「音楽の奏者と聴取者の感情の共有が起こるのが良い音楽だ」みたいなことを言っていたような気がします。



サラバンドも非常に優雅で上品、

器楽的であり、宮廷舞曲的でもあり、両方を兼ね備えたあのサラバンドを聴けたことをとても嬉しく思います。

バスが2拍目オクターブ下がってもあくまで優雅、重さはそこまで無いと感じられたのも舞曲的でした。

勉強のため他のリュート、チェロ組曲のサラバンドはもちろん、鍵盤楽器のためのフランス組曲や6つのパルティータの楽譜も買ってサラバンドを聴いていました。

そうすると器楽に寄っている演奏が結構多いように感じましたが、やはり舞曲の要素がある方が好きです。

他の組曲を構成する舞曲もやはりその両方を兼ね備えていて、拍子に合わせて自然と体が動いてしまいました。


昨年夏頃バロックダンスのDVDを買って舞曲ごとにリズム譜を作ったり、DVDを全て文字起こしし、ちょっとステップを踏んだりしていましたがあれをやった意味があったなあ、と嬉しくなりました。


私は特にリュートで弾くリュート組曲を聴くと長谷川等伯の「松林図屏風」を始めとした水墨画がイメージとして浮かんでしまいます。

「松林図屏風」は写真でしか見たことは無いのですが。

因みに「松林図屏風」はコンサートがあった東京国立博物館が所蔵していて、毎年かはわかりませんが年始に公開する事が多いようです。

前回と今回、博物館の無料チケットを貰えましたが、そのチケットのプリントも「松林図屛風」。

今回のコンサートは正にそれが浮かんできて、それが所蔵されている場所でそういったイメージの浮かぶような演奏が聞けたこの日は忘れられない日になりそうです。


なぜ水墨画が浮かぶのかよくわからないのですが、松林図屏風は16世紀、リュートが特に活躍した時代に描かれたからかな。


古いものと新しいものが絶妙に融合し、更に発展していく。

そんな2つのコンサートを聴く機会を得ることができ、しかも少しですが理解しながら聴くこともでき、本当に良かったと思います。


また機会が合ったらさらに勉強して聴きに行きたいです。






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