霧が晴れた

6月は「倍音・共鳴音の月」と言っても良かったです。
生徒さんの側でも色々起こり、私にとっても色々起こり、それについてどう対処すれば良いか。
その辺りについて模索しておりました。


〇私にとっての色々の例
1.現在弾いている和音の構成音に含まれる倍音が音程として聞こえ、それが非和声音として和音に混ざり、響きが濁った和音と認識してしまう。
2.現在弾いている音の共鳴音(自然倍音)と平均律で設定された実音の周波数の差異を感じ、執拗に消音しようと努めてしまう。
3.今まで好きで頻繁に聞いていた演奏家のCDを聞いていると特定の音が弾かれた後(0.1秒後とか)、その音が発する倍音を認識し、特定の音だけ常にエコーがかかったように聞こえてしまう。

1.はこの和音が最も良い例でしょうか。
画像1
997サラバンドリュートギター譜-3.jpg
ト長調主和音の第1転回形。
4弦の開放レに含まれる第3倍音ラが聞こえてしまい、G9/Bのように感じてしまう。

2. は数字を使って説明したいのですが、他の方のお仕事の邪魔をしてしまう事になるかもしれないので控えます。

そして3.も含めて全ての原因はこれではないかとここ数日で感じました。
リンクは3D立体視のサイト。

視覚のフォーカス、焦点をコントロールすると今まで見えなかったものが浮き上がってくるという、点描的な図です。
私はここ数か月。
倍音を研究するためにどうも聴覚の焦点とでも呼ぶべきものを通常とずらし、倍音にスポットを当てて音を聞いておりそれが日常化してしまったようです。

その根拠は今月お会いしてご意見を伺った、分野の異なる3人の音楽のスペシャリストの方々。
皆様それぞれ立派な経歴を持ち、各分野で10年、20年とキャリアを重ねてきた方々。
名前を出したら「おー!」となる方も。
そう言う方々に正式にレッスンをお願いし、この件についてご意見を伺ってきました。

すると皆様さきほどの画像1の和音。
下から2番目のレから発生する第3倍音ラは最初認識できませんでした。
説明し、何回か弾いて良く聞いて頂き認識できる程度のもの。

キャリア、和声感や聴音能力に関しては信頼できる方々ばかりです。
そこで、これは自分が何かおかしな事をしていると判断しました。
色々な可能性を検討し、自分は先ほど述べた聴覚の焦点をずらして音を聞いていると結論が出ました。

聴覚の焦点をずらすというのは2つの種類がある様に思います。
1つ目は鳴らした音より高い音を聴こうとする、音程的焦点をずらす。
2つ目は鳴らした音の一瞬後に聞こえてくる倍音を待つ、時間的焦点をずらす。

例えば低音が旋律、高音が伴奏となっているヴィラ・ロボスのプレリュードNo.1の前半。
あるいはうちの教室だとL.ワルカーの小ロマンスを学習用に弾く事が多いのですが、その曲の最初の数小節もそのような構成。
普通は低音の旋律に注意を払い、あまり高音の伴奏を熱心に聞こうとする方はいないと思います。

しかし、倍音を聞こうとするとどうしても高い音を聞こう聞こう、と言う癖がついてしまいます。
倍音が良く聞こえてしまうというのは、その高音の伴奏に無意識に聴覚の焦点を当ててしまうのに近いかもしれません。

これが聴覚の音程的焦点の「ずれ」。


もう一つ、楽譜の音を弾いた後、ギターだと0.05秒から0.1秒くらいすると鳴らした基音が減衰し、倍音が聞こえだす場合が多いです。
そして倍音を聞く訓練していると、音が鳴った後、ほんの少しの時間差で聞こえだす倍音を聞く準備をするようになります。
それも無意識で。

ウグイスの「ホー」を聞いて「ホケキョ」の来るタイミングを予測し聞く準備をする。
多くの方がこれは可能だと感じられるでしょうし、実際行った事がある方もいるかもしれません。
倍音を聞く準備はこれに近いです。
無駄にウグイスの鳴き声をスペアナで調べていたわけではないのですよ。

これが聴覚の時間的焦点の「ずれ」。

あるいは聴覚ではなく脳の別の分野の話になるかもしれませんが、音に関する事なので仮ということで「聴覚」という単語を選びました。

これが今月、というよりはここ数か月私が悩んできた色々でした。
3人の専門家の方のお陰でこれは解決できそうです。
皆様、本当にありがとうございました。

次は生徒さんに起こった色々の例。
〇生徒さんの色々の例
1.Aさん 音階を弾く時、心地良くないので自主的に共鳴音を全て消音しながら練習するようになった。
2.Bさん 曲を弾く時、不要な、特に5,6弦の共鳴を最初から最後まで自主的に消音するようになった。
私個人はそう言う演奏も行っていましたが、それを行うよう提案したことは無かったと思います。

これらの現象は、ある練習を提案して3、4ヵ月くらいして起こった事でしょうか。
仮にそれを練習Aとしましょう。

これは良い事か悪い事か。
昔ならば、その人達の音感や和声感が高まり良い事だ、と堂々と言えたでしょう。
響きに対して敏感になり、技術を持ってそれを良くしようと自主的に行った演奏表現、素晴らしいと手放しで褒めていたと思います。
今でもこれを自主的に行って下さったならば嬉しく思いますが。

具体的にどういう箇所でこれが使えるかと言うと例えばラグリマの最後。


ラグリマ基礎実践-1.jpg

ホ長調の曲で主和音で終わるため主音であるミが3つ配置されています。
問題は5弦開放ラの第3倍音がミであるため5弦が共鳴し1弦とほぼ同じ周波数のミを鳴らします。
正確には約2セント異なりますが。
セントとは1オクターブを1200に分割した数比の単位で、半音(1フレット分)の音程差は100セントとなります。
セント値と言われると難しそうに聞こえますが、要はこれパーセントのセントなのではないかと最近勝手に考えております。
2セントの音程差とは半音の2パーセント音程が異なる、と考えると何となく身近になってくるのではないかと。

それでラグリマの5弦がミに共鳴する問題。
3拍子の曲で最後は3拍目が休符になっています。
皆さん鳴らした実音4弦ミ3弦ソ♯1弦ミ、6弦ミは3拍目で消音するのですが、何も言われずに5弦共鳴音を意識的に消音する方は多くはないです。
何故かと言うとどうも共鳴音を音として認識できていないみたいです。
そうなると厳密には休符が休符ではなくなる。

休符というのは非常に重要です。

美術系のお仕事の方に休符の役割をお話したら、絵画で言うネガティブスペースに当たる気がする、と教えて頂きました。
絵画や写真でネガティブスペースと呼ばれるのはメインのモチーフや被写体以外の部分。
写真でのネガティブスペースの解説サイトです。

こちらは昔私が撮影した北海道のタウシュベツ橋と天の川の写真。
〇で囲んだところがネガティブスペースに当たるでしょうか。
DSC_7987syou.jpg

構図を変え色々試しましたが、天の川が真ん中に大きく来るのは非常に宜しくない。
ネガティブスペースが広い方が良かったりします。


書道で言うなら字以外の余白部分。
その余白と文字のバランスが作品の美しさに関わるとか。

それらと等しい重要な休符。
もしそこで鳴っている共鳴音を認識し、自主的に消音する方が増えたら講師としてとても嬉しく思います。
それで始めた特別な練習A。
全く難しい練習ではないのですが、私に起こった色々で挙げた「聴覚の焦点をずらす」が関わってきます。
それにより生徒さんに色々と変化が見られたわけです。

ただ、その変化はまだ良かったのですが、私に起こった色々に移行する危険があり、そうなると今までは修正方法が不明な状態でした。

それが今回3人の専門家の方々にご意見を伺い、霧が晴れたように解決しました。
本当にありがとうございました。
音楽ホールでの実験が不要になった気もしますが、一応ホールの予約もしてお金も払ってしまったので近々行って最後の確認をしてきます。

霧が晴れた摩周湖の朝。
DSC_8491.JPG

ごめんなさい嘘です。
正確には霧が出なかった摩周湖の朝。
今年の夏は北海道に行こうかと思っており、それをお伝えした方もいましたが、ちょっと音楽に集中したいので来年にしました。

でも昔の写真を見ていると行きたくなってしまう。

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