倍音1:クラシックギターの撥弦箇所による音色変化

この所音楽に関する内容をあまり書きませんでした。
それは現在取り組んでいる内容が私にとって非常に難しく、また、長期的な視野で考証しなければいけないものだった、というのが大きな理由となります。

それについても近々進展を少しご紹介できると思いますが、本日はクラシックギターの撥弦(弦を弾く)箇所における音色変化についてご説明いたします。
撥弦箇所を変える事で音色に変化が起こる理由。
それは弦を弾く場所によって発生する倍音が変化するためです。


そもそも倍音とは何か。
wikipediaの倍音の項目を見るとこのように書かれています。

倍音(ばいおん、:Oberton:overtone[1]harmonic sound[1]harmonic overtoneharmonics)とは、楽音音高とされる周波数に対し、2以上の整数倍の周波数を持つ成分。1倍の音、すなわち楽音の音高とされる成分を基音と呼ぶ。

弦楽器管楽器などの音を正弦波(サインウェーブ)成分の集合分解すると、元の音と同じ高さのの他に、その倍音が多数(理論的には無限個)現れる。

ただし、現実の音源の倍音は必ずしも厳密な整数倍ではなく、倍音ごとに高めであったり低めであったりするのが普通で、揺らいでいることも多い[要出典]。逆に、簡易な電子楽器の音のように完全に整数倍の成分だけの音は人工的な響きに感じられる。

以上引用。

これを読んでも良く分からないという方もいると思います。
でもそれが普通なので大丈夫です。
音を鳴らすとその周波数の2,3,4倍の音が倍音として発生するという事です。


下のグラフはギターの最も低い、6弦の開放音E(弦を押さえず鳴らす音)を下駒付近で弾いた時に鳴る基音(鳴らした音)とそれにより発生した倍音のグラフです。
基音(E2 82.4Hz)の周波数×2,3,4…したものが倍音として発生しているのがご確認いただけるのではないかと思います。
縦が音圧(音量)であるデジベル(db)、横が周波数(Hz)になります。この周波数により音程(グラフはA=440Hzで平均律の調弦から出た倍音)が定まります。
1:下駒付近.jpg

一応録音情報を書いておきます。
マイク:ロジクール Webカメラ C920n
マイクとの距離:約50cm
撥弦してからの時間:0.06秒後
弦:サバレスコラム 張ってから5日後
ギター:ペドロ・バルブエナ 
撥弦箇所:下駒付近
下駒はギターの下側で弦を固定する白い部分です。
こういうのを作っておくとこういう時に地味に便利ですね。
クラシックギターの各部位名称.jpg
さて、上の6弦開放音、下駒付近で撥弦した時のグラフですが、まず一番左の山 基音E2 82.4Hzというのが6弦開放音であるミの音の周波数となります。
第2倍音E3と比べると非常に山が小さいですが、この基音E2より右側の音の山は全てこの基音が鳴る事で発生しております。
山が小さいのはマイクの感知周波数の下限ギリギリだからでは無いかと私は推測しています。
要は音の周波数が低すぎて使用したマイクではその音を受信しにくいからではないかと。
皆様弾いてみたら同様に感じて頂けると思いますが、基音であるE2が一番聞こえると私は感じました。
1,2秒後は倍音の方が聞こえる場合もありますが。

倍音については説明しようとするとかなり深くなり、実際生徒さん用にA4で10ページほどの資料もあるのですが、あんまりお勉強的になると「難しいから読みたくない」となると思うので分かりやすさ重視でいきます。

下の2つのグラフ、6弦開放「ミ」を1枚目撥弦箇所12F上、2枚目撥弦箇所16F上、で弾いた時に発生する倍音の音圧をご覧ください。
1枚目のA2 110Hzは何度繰り返してもグラフに出現するのですが、説明に関係ないので無視してください。
2:12 F上E3.jpg
3:16 F上G♯4.jpg

第2-7倍音を比較するのがわかりやすいでしょうか。
第2倍音E3 164.8 Hz(4弦ミと同じ周波数)は12F上で撥弦するとかなり音圧が低いです。
一方16F上で撥弦するとかなり音圧が高くなっております。
同様に第3、4、5…比較すると撥弦箇所によりその違いが明確になると思います。
この違いが音色の差になります。

それでは実際に音の違いを聞いて頂きましょう。
下の動画は

最初に2回、チューニングが合っているかの確認のため撥弦箇所を変えてホ短調主和音、Emコードを弾いています。

その後第5倍音と同じ高さのソ♯の実音を弾いた後

1回目下駒付近

2回目サウンドホール上

3回目第5倍音「ソ♯」ハーモニクスポイント16F上 上記画像2枚目

4回目第2倍音「ミ」ハーモニクスポイント12F上 上記画像1枚目

6弦開放ミを弾いております。1-5弦は全て消音しております。

消音理由はそれにより発生する微妙に周波数の異なる共鳴音の感知を防ぐためです。

ハーモニクスポイントとはそこに触れてハーモニクスを鳴らすとその周波数の倍音が鳴る箇所で、そこで撥弦するとその倍音とその倍音により発生する倍音が抑えられます。

私のレッスン用の造語であり、そのうちまた詳しく説明いたします。

音色の違いが確認できたでしょうか。
6弦は倍音を聞きやすいため今回選びましたが、1-6弦全ての弦で同様の倍音の変化が起こります。
加齢による可聴周波数上限の低下(わかりやすいのはモスキート音が加齢によって聞こえなくなる)が理由で聞こえ難くなる事はありますが、これらはどちらかと言うと訓練により聞こえる、聞こえない人に分かれます。

ある意図を持って撥弦箇所を変えてその倍音を記録した比較グラフがこちらになります。
その意図とは倍音コントロールですが、その辺りは長くなるのでまたいつか書き記します。

以上、撥弦箇所による音色の変化の説明なのですが、その原因である倍音を説明に組み込むとわかり難くなることは自覚しています。
しかし、その説明において倍音を省くことは不可能なため、それを交えて説明させて頂きました。

私は頭が良くなく、その説明において不足がある事は重々承知しております。
今回の説明で分からない場合、それは私の説明が不足しているとお考え下さい。
その場合、生徒さんでなくともどこがわからないのかメールを頂ければ返信いたします。
どうぞご遠慮なくおしらせください。

市川亮平
info@ichikawa-cgt.com

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